口腔機能低下症とは?症状や診断基準、治療について解説

こんにちは。松山市小栗の歯医者「小栗歯科」です。

食事中にむせる高齢女性

食事中にむせる、硬いものが噛みにくい、口が乾きやすいといった変化を感じていませんか。これらは加齢による仕方のないことと見過ごされがちですが、実は口腔機能低下症という病気のサインかもしれません。

この記事では、口腔機能低下症の定義や具体的な症状、歯科医院での診断基準と治療方法、さらに日常生活でできる予防策を解説しています。「最近口の調子がおかしいかも」と感じている方や、ご家族の食事の様子が気になっている方は、ぜひ参考にしてください。

口腔機能低下症とは

口腔機能低下症について説明するイメージ

口腔機能低下症とは、加齢や全身疾患、生活習慣などのさまざまな要因によって口腔内の機能が複合的に低下した状態を指します。2018年の診療報酬改定で保険診療上の病名として位置づけられ、正式に歯科の診断名として認められるようになりました。

かつては、歳をとれば食べる力が落ちるのは当然と考えられていました。しかし現在では、こうした機能低下を早期に発見し、適切にケアすれば進行を遅らせたり、症状の改善が期待できたりすることがわかっています。

口腔機能低下症は、それ自体が直接的に命に関わる病気ではありませんが、放置するとオーラルフレイル(口腔の虚弱)が進行し、低栄養や全身のフレイル(身体的な虚弱状態)、さらには要介護状態へとつながるリスクがあるとされています。

対象となるのは主に65歳以上の高齢者ですが、全身疾患を抱えている方や、歯を多く失っている方などの若い年齢でも起こりうるとされています。口の中の変化を老化の一部と諦めず、気になる症状があれば歯科医院に相談してみましょう。

口腔機能低下症の症状

口の乾燥が気になる高齢女性

口腔機能低下症は、ひとつの大きな症状として現れるわけではありません。口腔内のさまざまな機能がそれぞれ少しずつ衰えていくことで、日常生活の中でじわじわと不調が積み重なっていくのが特徴です。

口の中が乾く・ベタつく感じがする

唾液の分泌量が減少することで、口腔内が乾燥しやすくなります。唾液には食べ物をまとめて飲み込みやすくする働きや、口腔内を清潔に保つ自浄作用があるため、分泌量が低下すると食事がしにくくなるだけでなく、虫歯や歯周病のリスクも高まります。

口がいつもパサついていたり、話すと口が乾いたりする感覚がある場合は注意が必要です。

食べ物を噛む力が弱くなった

噛む力(咬合力)の低下も、口腔機能低下症を示す重要なサインのひとつです。硬いものを避けるようになったり、以前は問題なく食べられていた食品が食べにくくなったりすることがあります。

咬合力の低下は、歯の喪失や歯周病の進行、筋力の衰えなどが複合的に影響します。

舌の動きや力が落ちた

舌は食べ物を奥歯に運んだり、それをかたまりにして喉へ送り込んだりと、食事において非常に重要な役割を担っています。舌の筋力や動きが低下すると、うまく食べ物をまとめられなくなり、食べこぼしが増えたり、発音がしにくくなったりすることがあります。

食べ物や飲み物でむせる・飲み込みにくい

嚥下機能(飲み込む機能)の低下は、口腔機能低下症の中でも特に日常生活への影響が大きい症状です。食事中にむせることが増えた、錠剤が飲み込みにくい、水を飲むときにむせるといった状態は、嚥下機能が低下しているサインである可能性があります。

誤嚥が繰り返されると誤嚥性肺炎のリスクも高まるため、早めの対処が求められます。

食べ物が口からこぼれる・うまくかみ砕けない

口唇や頬の筋肉の機能が低下すると、食事中に口の中の食べ物をうまく保持できなくなります。食べこぼしが増えたり、噛んでいる最中に食べ物が頬の内側や舌の下に落ちてしまったりすることがあります。

口腔機能低下症の診断基準・診断方法

口腔機能低下症の診断を受ける様子

口腔機能低下症の診断は、歯科医師が専用の検査を行い、複数の項目を総合的に評価して判断します。日本老年歯科医学会の診断基準では、以下の7つの機能項目を検査し、3項目以上が基準値を下回る場合に口腔機能低下症と診断されます。

これらの検査は保険適用で受けることができ、通常の歯科定期検診と合わせて実施している歯科医院も増えています。「なんとなく食べにくい」と感じている方は、ぜひかかりつけの歯科医院に相談してみてください。

口腔衛生状態の評価

舌の表面に付着した白や黄色の汚れ舌苔(ぜったい)の量を専用の指標で評価します。舌苔が多いほど口腔内の細菌数が増加しており、口腔衛生状態が不良と判断されます。

口腔乾燥の評価

口腔粘膜の湿り具合を測定する機器を用いて、唾液分泌の状態を数値化します。乾燥の程度を客観的に把握するための検査です。

咬合力の評価

専用のフィルムを噛んでもらい、その色の変化から咬合力を測定します。歯の本数や義歯の状態なども考慮して評価されます。

舌口唇運動機能の評価

「パ・タ・カ」と繰り返し発音してもらい、1秒間に何回言えるかを計測します。舌や口唇の動きの速さや協調性を評価する検査です。

舌圧(舌の力)の評価

専用のバルーンを舌で上顎に押しつける力を測定します。舌圧の低下は、食べ物をうまく飲み込めない嚥下機能の低下と関連しています。

咀嚼機能の評価

グミゼリーなどの専用の検査用食品を噛んでもらい、どの程度細かく粉砕できるかを評価します。咀嚼後の食品の状態から機能を客観的に判定します。

嚥下機能の評価

質問票(嚥下スクリーニング検査)を用いて、むせの頻度や飲み込みにくさの自覚症状を確認します。必要に応じてより詳細な検査が行われることもあります。

口腔機能低下症の治療方法

 咬合力の回復のために使用する入れ歯

口腔機能低下症と診断された場合、歯科医院では低下している機能の種類と程度に応じた治療・訓練が行われます。一度低下した口腔機能も、適切なアプローチによって改善が期待できます。

口腔衛生管理・乾燥への対応

舌苔の除去や適切なブラッシング指導、専門的なクリーニングによって口腔内の清潔を保ちます。口腔乾燥に対しては、保湿剤の使用や唾液分泌を促すマッサージの指導が行われることもあります。

唾液腺(耳下腺・顎下腺・舌下腺)を刺激するマッサージは、自宅で毎日実践できる簡単なケアとして取り入れやすいでしょう。

咬合力の回復

歯の欠損がある場合には、入れ歯やブリッジ、インプラントなどの補綴治療によって咬合を回復することが優先されます。適切に噛める環境を整えることが、咀嚼機能全体の底上げにつながります。

口腔機能訓練(口腔リハビリテーション)

舌を上顎に押しつける舌圧訓練や、口唇を閉じる力を鍛えるトレーニング、「パ・タ・カ・ラ」の発声訓練などが代表的です。いずれも歯科医師の指導のもとで正しい方法を習得し、自宅で毎日継続することが大切です。

嚥下機能の低下がみられる場合には、嚥下体操と呼ばれるリハビリを行うこともあります。首や舌、舌骨周囲の筋肉を動かす体操によって、飲み込む力を維持・回復させることを目的としています。

定期的なモニタリング

治療の効果を確認するために、定期的に同じ検査を繰り返して機能の変化を追跡します。口腔機能低下症の管理は一度で終わるものではなく、継続的な通院と自宅でのセルフケアの組み合わせによって維持・改善を目指すものです。

口腔機能低下症にならないためにできること

毎日の口腔ケアを丁寧に行う様子

口腔機能低下症は予防できる病気です。日常生活の中で予防のための意識を持つことが、口の健康を長く守ることにつながります。

バランスのよい食事を心がける

口腔機能の維持には、筋肉や粘膜の材料となるたんぱく質やビタミン類をしっかり摂ることが基本です。やわらかいものばかり食べていると、噛む機能や舌の動きが低下しやすくなります。

適度に歯ごたえのある食材を意識して取り入れるようにしましょう。

毎日の口腔ケアを丁寧に行う

虫歯や歯周病を放置すると、歯の喪失や口腔内環境の悪化を通じて口腔機能の低下を招きます。毎日のブラッシングに加え、歯間ブラシやデンタルフロスを活用した丁寧なセルフケアが口腔機能の土台を守ります。

定期的に歯科医院を受診する

口腔機能低下症の多くは、自覚症状が出る前から少しずつ進行しています。そのため、定期的に歯科医院を受診して機能の変化を早期に把握しておくことが大切です。

近年では、定期検診と合わせて口腔機能のスクリーニングを実施する歯科医院も増えていますので、かかりつけの歯科医院に相談してみるとよいでしょう。

積極的によく話す・声に出す

会話や音読など、口を積極的に動かす習慣も口腔機能の維持に役立ちます。特に一人暮らしで会話の機会が少ない方は、意識的に声を出す機会を設けてみましょう。

「パ・タ・カ・ラ」の発声練習は、治療としてだけでなく日常の予防習慣としても取り入れられます。道具不要で場所を選ばず実践できるため、毎日のルーティンに加えやすい点もメリットです。

まとめ

家族と食事を楽しむ高齢夫婦

口腔機能低下症は、口の乾燥・噛む力の低下・舌の動きの衰え・むせやすさなど、複数の機能が複合的に低下した状態であり、2018年から保険診療の対象となっています。7つの検査項目のうち3つ以上が基準を下回ると診断され、歯科医院での訓練や補綴治療、日常的なセルフケアによって改善が期待できます。

「歳だから仕方ない」と諦めずに、気になる症状があれば早めに歯科医院を受診することが大切です。口腔機能を守ることは、食べる楽しみや会話の豊かさを守り続けることにもつながります。

ぜひ定期的な歯科受診を習慣にして、いつまでも自分の口でおいしく食べられる生活を目指しましょう。

口腔機能低下症かもしれないと不安な方は、松山市小栗の歯医者「小栗歯科」にお気軽にご相談ください。

当院は、地域密着型の歯科医院として、松山市の地域虫歯0を目指して患者様に常に向き合った治療を心がけています。予防歯科や矯正治療・小児矯正に力を入れながら、一般歯科やホワイトニング、インプラント治療などにも対応しています。

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